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動物の感染症とフコイダン

これまで、動物の飼育とフコイダンについて幾つかご紹介してきました。
フコイダンを混ぜた資料を食べさせることで健康を増進したり、免疫力を高めたりするだけでなく、ブタ肉の品質を向上させるという話もありました。

これらは、健康な状態の動物を健康な状態のままで保つ事が目的でした。
今回ご紹介する例は、病気にかかった動物を治療するためのフコイダン研究です。

ウィルスとフコイダン

ウィルスというのは、非常に不思議な特徴を持っています。どのような生物も、細胞から形作られているのですが、ウィルスはそうではありません。

ウィルスが発見されるまでの生物とは、細胞分裂を始めとした手法を使い「自らを複製」する事が出来るものだと考えられていました。
ところが、ウィルスは増えることは出来るのですけれど、自らが増えるのではなく、生物の細胞に自らの遺伝子を注入し、ウィルス以外の細胞にウィルスを作らせると言う方法で増殖します。

この様な特徴を持つウィルスに対して効果を発揮するには、ウィルスの活動を抑え、細胞に感染しにくくするか、感染してしまった細胞の活動を抑えて増殖したウィルスが放出されるまでの時間を遅らせてしまうと言う方法が考えられます。
そうやって時間を稼いでいる間に、ナチュラルキラー細胞を始めとした免疫細胞が活躍することで病気を治るというわけです。

たとえば豚の病気に関する論文では、フコイダンを始めとした硫酸化多糖類によって、アフリカ豚コレラウィルスの複製を抑えることが出来たとあります。1)

またウシに関しては、ヘパリンやフコイダンを使うことで、ウシウィルス性下痢ウィルス(BVDV)が健康な細胞への結合を邪魔したり、感染能力を下げたりする事ができると考えられています。2)

ウシバベシア寄生虫は、赤血球に侵入して増えていくことが知られていますが、ヘパリン硫酸やフコイダンと言った硫酸化多糖類は、寄生虫が赤血球に侵入することを強く阻害すると書かれています。3)
寄生虫はウィルスではありませんが、参考までにご紹介させていただきました。

この様にフコイダンはウィルスを始めとした病原体*に対して直接の攻撃を加えるわけではありませんが、上記のようなはたらきによって、感染症の治療に役立つという訳です。

*細菌、カビ、ウィルスなど、人間の体内に入ることで病気を引き起こす原因となるものをいいます。

1) Influence of level and duration of feeding polysaccharide (laminarin and fucoidan) extracts from brown seaweed (Laminaria digitata) on quality indices of fresh pork.
Moroney NC, O’Grady MN, Robertson RC, Stanton C, O’Doherty JV, Kerry JP.
Meat Sci. 2015 Jan;99:132-41. doi: 10.1016/j.meatsci.2014.08.016.

2) Interactions of bovine viral diarrhoea virus glycoprotein E(rns) with cell surface glycosaminoglycans.
Iqbal M, Flick-Smith H, McCauley JW.
J Gen Virol. 2000 Feb;81(Pt 2):451-9.

3) Asexual growth of Babesia bovis is inhibited by specific sulfated glycoconjugates.
Bork S, Yokoyama N, Hashiba S, Nakamura K, Takabatake N, Okamura M, Ikehara Y, Igarashi I.
J Parasitol. 2007 Dec;93(6):1501-4. doi: 10.1645/GE-1166.1.