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赤い光でがん細胞を死滅させる【NEWS】

手術、薬剤、放射線の3つががん治療の中心的な位置を占めていることは多くの方がご存知でしょう。
これら以外にも、様々な治療法が模索されていることもまた誰もが知るところです。

例えば、NIHの小林氏が研究しておられる「近赤外線」を使った治療法は、楽天の三木谷氏が大きな出資をしておられ、先ごろ日本でも臨床試験が発表されました。

このような中、6月8日に甲南大学から、新たな光線治療の研究発表が有りました。
(文末に、プレスリリースを紹介しておりますので、ご興味のある方はそちらもご参照ください。)

NRAS遺伝子をターゲットにした治療である

NRAS遺伝子というのは、正確にはNRASmRNAによって作られたタンパク質のことを指します。
このページでも何度かお伝えしているように、RNAによってタンパク質が作り出されることを「遺伝子発現」と呼びます。

この、NRASと呼ばれるタンパク質は、がん細胞の増殖を手助けしたり、転移を手助けしたりすることが知られており、これを制御できれば治療に大きく役立つと考えられていました。

今回の研究発表は、NRASの設計図となる「NRASmRNA」を破壊することで、「NRAS」を作られなくし、がん細胞の活動を止めてしまおうというものなのです。

どうやってNRASmRNAを破壊するのか

これは、特殊な物質を体内に投与することと、近赤外線を照射することで破壊します。
この記事のはじめに書いた、NIHの小林氏の研究も「近赤外線」を利用したものですが、甲南大学によって発表された成果も同じく「近赤外線」によるものです。

まず、 NRASmRNAに結合する + 近赤外線に反応する という2つの特徴を持つ特別な物質「ZnAPC」を体内に投与します。
すると、血液を始めとした体液、細胞内に存在する「NRASmRNA」に「ZnAPC」が結合します。
そこに「近赤外線」を照射することで、「NRASmRNA」が破壊されるというわけです。

mRNAを破壊すると何が起こるのか

研究によると、「NRASmRNA」が破壊されることで「NRASタンパク質」の量が大幅に減少します。
「NRASタンパク質」に手を加えなかった細胞が、100%以上の生存率であるのに対し、「NRASmRNA」を破壊する処置をした細胞の生存率はおよそ5%にまで減少するのだそうです。

このように、明らかにがん細胞の活動が抑制されるのです。

「ZnAPC」を投与して近赤外線を照射しなかった場合には、細胞の生存率に変化が見られないことから、安全性も高いと考えられています。

また今回は、乳がん細胞(MCF-7)を使った実験が行われていますが、「NRAS」が関与するものは他にも存在することから、乳がん細胞以外にも有効だと考えられます。

近赤外線を使った新たな治療としては、2例目となる甲南大学の発表ですが、先に発表されているNIHの小林氏の発表を含め、これからのがん治療に心強い光が射してきたのではないでしょうか。

参考文献

がん細胞の増殖や転移を促進する分子だけを狙って破壊する新しい光線力学治療法の開発 ( 甲南大学プレスリリース )
http://www.konan-u.ac.jp/news/wp/wp-content/uploads/2018/06/public-relations-department/20180608pressrelease.pdf