抗がん剤治療はいつまで続けたらいいのか
がん治療には、大きくは手術、放射線、抗がん剤(化学療法)に分けられますが、抗がん剤(化学療法)だけの特徴があります。
それは、治療にはっきりした区切りがない「場合がある」という点です。
明らかに効いているような場合には、効いている間は続けるのはもちろんでしょう。
例えば、一時期大きく報道された肺がんの薬「イレッサ」などは、効いている間は病気の進行が止まり、その期間は数年に渡ることもあります。
前立腺がんや乳がんなどで行われるホルモン剤治療も、効いている間は続けるだけの価値が十分あります。
明らかに効いているわけではない場合、というと語弊がありますが、「病気の進行を遅らせているだろう」と言う場合が問題です。
「どの程度遅らせているのか」となると、今までの経験やデータに基づいて判断するしかありません。
こうなると、治療を続けたほうが良いのかどうかをはっきりと決めるのが難しくなってしまいます。
では、どうすればよいのでしょう?
自分にとって本当に大事なことは何か?
こういった場合、自分自身にとって「生きる」というのがどういうことなのか、大事なことはなんなのかを最初に考える必要があるのではないかと思うのです。
良い例えが見つからないのであれですが
昔、「最高の人生の見つけ方」という映画を見ました。
ある日、エドワード(ジャック・ニコルソン)とカーター(モーガン・フリーマン)が、病院で出会います。
エドワードは偏屈なお金持ちで、カーターはどちらかといえば穏やかで、金銭的には裕福ではありません。
そんな二人の共通点は、「がん」を患っているということでした。
水と油のような二人ですが、だんだんと二人は仲良くなってゆきます。
ある日、カーターが書いていた「やりたいことリスト」を目にしたエドワードは「ふたりで」リストを実行してゆこうと考えます。
映画だということもあるのでしょうが、スカイダイビングや自動車レースなど、色んなことをやってました。
「ふたりで」というわけにはいきませんでしたが、最終的には、すべてのリストが実行されることとなります。
良い映画だと思うので、興味がある方は見て見られると良いかと思います。
病気と人との適度な距離感が、見る人を選ばないと思います。
さて、これを読んでいる皆さんのリストがどのようなものかは分かりません。
ただ、がんという病気の場合、脳や循環器の障害とは異なり、考えたり行動したりする時間が残されていることが多いのです。
映画のようなドラマティックなリストがなくても、
例えば、哲学者のように、思索出来ること、考え続けられることが何より大事だとするならば
ものを考えられないほどの副作用は好ましくないでしょうが、別にベッドの上にいても構わないでしょう。
自力で行動出来なくても最も大事なことは出来ます。
例えば、旅行が大好きな方の場合、行きたいところがあるならば、屋外で活動できなくなるのは問題です。
多くの化学療法は、副作用によって体力を減少させ、日常生活の質を低下させます。
結果として「元気な・活動的な期間」が短くなってしまうことがあります。
どこかの段階で、治療の効果や副作用とやりたいこととのバランスを取る必要がでてくるのです。
1.まず、先生に「治療をしたときに考えられること」をしっかりと聞きます。
2.自分にとって何が大事なのかをしっかり考えて、大事なことが出来るかどうか、治療効果とのバランスを考えます。
3.バランスが取れなくなったときが、中止を考えるときです。
例えば、
・元気な(活動的な)期間が少しでも長いほうが良いなら、自力で歩くのが不安になったら止め時を考える。
・ベッドの上でも構わないので、生存期間が少しでも長いほうが良いなら、トイレやお風呂が介助を含めて自分で出来なければ止め時を考える。
もちろん、色んな考え方があって良いわけで、必ずしもこの記事のとおりにする必要はありません。
ただ、どんな治療を受ける場合でも「自分にとって何が一番大事なのか」を考えた上で「自分で選ぶ」のが最も大事なことではないかと思うのです。