がん家系って本当にあるの?(遺伝とがん)
「私は(私の家は)がん家系だから」そんな言葉を聞くことがあります。
がん家系だからがんに罹りやすいと言われているわけですが、大抵の場合は勘違いや取り越し苦労と言えます。
がん家系ってなに?
世間一般に「がん家系」と呼ばれるものは医学的な言葉では、がん家系とは呼ばず「家族性腫瘍(かぞくせいしゅよう)」と呼びます。
中でも、多くの方が考えておられるであろう「がん家系」のことを「遺伝性腫瘍症候群(いでんせいしゅようしょうこうぐん)」と呼びます。
「遺伝性腫瘍症候群(いでんせいしゅようしょうこうぐん)」とは、いわゆる「遺伝的にがんにかかりやすい」ということですが、遺伝する「可能性がある」と考えられているがんは、がん全体の10%程度しかありません。
しかも、その中で本当に遺伝しているものは、さらに数%と考えられています。
遺伝する可能性があるがんにあてはまると考えられている病気に大腸がんがあります。
この大腸がんの中で、遺伝して大腸がんにかかったものは、5%しかありません。*
がん全体のわずか0.5%の確率**です。大抵が勘違いや取り越し苦労だと言った意味がわかるかと思います。
家族集積性
遺伝を原因とするがんはわずか0.5%だと言うことをお伝えしましたが、遺伝以外にも家族ががんにかかりやすい場合があります。
それが、家族集積性(かぞくしゅうせきせい)と呼ばれる状態です。
家族の多くは、寝食をともにします。生活習慣が何から何まで似る可能性が高いといえます。
当然、同じ家ですから住環境、周囲の環境も同じです。
例えば、私の場合、父方の祖父の代から数えて、がんで亡くなった者が数多くいます。
祖父や祖母はがんとは関係ありませんでしたが、父親の代は全員がんを患いました。
そのうち二人は、肝臓がんを患いましたが、二人共大酒飲みでした。
小さい頃は、良く父親の一番上のお兄さんの家で宴会がありましたが、二人共ガンガン飲んで叔母たちに怒られてたのを覚えています。
そりゃあ、肝臓がんにもなるよね。と今なら思います。
生まれてこの方、家の中で全員が大酒飲みだったとしたら・・・、肝臓がんになる確率は跳ね上がります。
全員がヘビースモーカーだったら、これまた肺がん確率は上がります。
子供は親の習慣を真似やすい傾向にありますので、遺伝ではないのに同じ病気にかかってしまうことがあるというわけです。
これが家族集積性というものです。
まとめ
がんの原因は、遺伝子の変異(異常)にあります。
このため、遺伝するのではないか、家系的にがんを患いやすいのではないかと心配する方が多くおられます。
しかし、遺伝的にがんになる方は、ほんの僅かです。本来の意味でのがん家系というものは、大抵の人には縁がありません。
残りの大多数の方は、生活習慣や老化によってがんを患います。
一方で、家族全員でからだに良くない生活習慣を行った結果、がんを患う。
これは、多くの方に関係する話です。
遺伝子の異常は生きていれば、当たり前のことであり、絶対に避けることが出来ないものです。
それが病気につながるかどうかは、誰ひとりとして知ることは出来ません。
がん家系かもしれないからと、必要以上に心配するのではなく、健康的な生活を送ることが一番ではないでしょうか。
参照文献
*がん研有明病院 がんと遺伝の関係性について
http://www.jfcr.or.jp/hospital/cancer/heredity/relationship.html
**注記 実際には、様々ながんが均等に発生するわけではありません。大腸がんはがんの中でも大きな割合を占める病気ですから、0.5%よりも大きな数値になるはずです。
遺伝的ながんと言うのは非常に少ないということを伝えるための例として挙げています。