遺伝子検査と分子標的薬
抗がん剤には、様々な種類があります。
例えば、シスプラチンはプラチナ製剤と呼ばれますし、フルオロウラシルやTS-1などは代謝拮抗剤と呼ばれます。
これらの違いは、大きく言えば薬がどこに働きかけるかにあります。
今回のタイトルにある分子標的薬というのは、がん細胞にある特定の分子を標的にして攻撃するものを言います。
特定の分子とはなに?
がん細胞というのは、小さな工場のようなもので、あらかじめ決まった働きをします。
工場が稼働するのに必要なエネルギーや材料は、専用の入口から運び込まれて、出来上がったものは専用の出口から運び出されます。
しかし、これだけでは、工場は稼働できません。
例えば何かを作るとしても、いくつ作るのか、いつまでに作るのかなど、情報が無いからです。
材料が足りないとか、多すぎるとか、そんな情報だって必要です。
そこで細胞は、細胞表面に様々なアンテナをくっつけていて、常に外と連絡を取り合っている、そういう仕組みになっています。
このアンテナには様々な種類があるのですが、汎用的に多くの細胞が使っているものから、少ない種類の細胞だけが使うアンテナもあります。
中には、がん細胞に特徴的なアンテナというものもあります。
これが、分子標的薬がターゲットにする分子というものです。
この分子に働きかけることで、がん細胞は思ったように働けなくなり、活動を停止したり死滅したりしてしまいます。
特定の分子に働きかけることが出来るということは、そうでないものには働きかけないということを意味します。
その分子が特徴的であればあるほど、狙ったがん細胞以外を攻撃しにくくなります。
この様な特徴があるために、分子標的薬は比較的副作用が軽く、効果が高い傾向にあります。
遺伝子検査とその理由
特定の分子という目印があるがん細胞に効果が高い薬だということは、目印があるかどうかをあらかじめ見分けておけば、非常に効率が良いと考えられます。
また、目印がないのであれば投与をせずに済みますから、患者さんは非常に助かります。
この、あらかじめ見分ける方法というのが、遺伝子検査です。
がん細胞も細胞ですから、やはり遺伝子というものを持っています。
遺伝子というのは、細胞の設計図のようなものですから、そこには、このがん細胞がどんなものかを表す手がかりが隠されています。
遺伝子に特定のパターンがあるかどうかを見分けようという訳です。
今後ますます、遺伝子検査が広まっていくことで、効果的な薬だけが使われることが待ち望まれています。