研究開発27年、研究者が歩んだフコイダンとの歴史。

1990年 大石・谷・服部博士を中心とする研究チームが出来る(協同乳業内)

研究を開始した当時は、まだまだ発表されている論文総数も少なく、注目されているとはお世辞にも言えない状況でした。

そこで先生方が最初に取り掛かったのは、過去に発表された研究論文を検証することでした。

当時もフコイダンとがんに関する研究はされており、フコイダンのがんに対する働きは、自然免疫の活性にあるという説が主流になっていました。

精製度が低かった当時のフコイダン研究

これら様々な研究論文を検証してゆく中で直面したのが、試料としての標準的なフコイダンの精製度が低いという事実でした。

精製度が低いということは、フコイダン以外の様々な物質が含まれているということを表します。
フコイダン以外の物質があたえる影響を考えると、質の良い研究にはなり得ないと考えたのです。
もっと精製度の高いフコイダンで確かめるべきだと考え、1990年よりフコイダンの精製への取り組みを始めました。

精製度を高める研究に取り組むにあたって、まずはフコイダンの評価システムを作る必要がありました。
不要なものを除去したつもりが、必要なものまで残っていなければ全く意味はありません。

そこで、手近な褐藻類であるオキナワモズクや北海道の日高昆布を使い、フコイダンの活性を確かめるシステムのアウトラインを作ることにしたのです。

今に続くフコイダン評価システムの基礎

ヘパリンの評価方法を踏襲することで、LPLの活性を基準に判断する手法を確立したのがこの当時です。
この評価方法は今でも変わっていません。

抽出されたフコイダンは、ラットを使ってLPL活性を確認して基準を満たすものだけ出荷しています。
またこの当時、大石博士は協同乳業に所属する傍らで日本医科大学の老人病院研究所(現:先端医学研究所)の病理学研究室で非常勤講師としても活躍をしていました。
認知症や関節症状に代表される老人特有の症状に対してどの様にして貢献すべきか、と言う視点もこの時に培われたものです。

1997年 日本農芸化学会にてフコイダンとアレルギーに関して学会発表を行う(協同乳業内)

1996年には、第55回日本癌学会学術総会にて胃がん、結腸がん、白血病細胞に対するフコイダンによるアポトーシス誘導作用が発表され、一躍フコイダンに注目が集まることになりました。
もちろん、研究動向についての噂は知っていましたが、同じ研究をしても意味がありません。

どんな研究発表や論文にも言えることですが、新たな成果がなければ発表させては貰えないというのが一つのルールだからです。
このような理由から、他の分野についての研究を続けていました。

最初のフコイダン発表はアレルギーについて

そして、フコイダンの抗アレルギー作用について、フコイダンの生理機能について学会発表することとなったのが1997年のことでした。

以前より、フコイダンが免疫細胞の働きを高めると言うことは知られていましたが、アレルギー疾患との関わりについては、詳しく知られていませんでした。
フコイダンはマクロファージと呼ばれる免疫細胞の調整因子として働くことが出来ます。
マクロファージは、外から来た敵を食べる、そんな働きが有名です。なにせ、貪食細胞と言う別名がついているほどです。
しかし、もうひとつ大きな働きがあります。それは、周りの免疫細胞が戦う為の準備を整えるという大事な働きです。
マクロファージは、この準備のためにサイトカインという物質を分泌します。
そしてサイトカインを受け取った他の免疫細胞が、実際に戦いを始めるのです。
アトピー性皮膚炎や、アレルギー性鼻炎と言ったアレルギー反応というのは、この戦う反応が過剰に出ていることを指すのですが、サイトカインの量が適度になれば、アレルギー反応も和らげられる、というのがおよその内容です。

1999年~2000年 南太平洋における対日輸出産物の調査依頼にてトンガ産のモズクと出会う

1999年のことです。大石博士は農林水産省のプロジェクトとして南太平洋における対日輸出産物の調査依頼を受けることとなりました。

具体的には、南太平洋諸国の現地調査を行い、輸出(日本から見れば輸入)して産業化出来るものを見つけるというものです。
プロジェクトそのものは10年以上継続していたものの、さしたる成果もない現状でした。
しかし、日本で南太平洋サミットが開催されるということになった為、サミットでプロジェクトの成果を発表する必要が求められました。
農林水産省としては何としても成果が求められる、そんな状況での調査でした。

南太平洋諸国訪問・トンガでの出会い

初年度は成果をあげることは出来なかったのですが、翌年も再び調査のため南太平洋諸国を訪れることとなりました。

トンガ王国に訪問した際に、現地のガイドにモズクの繁殖地を案内され、モズクはどうか?と言うことになったのです。
案内してくれたガイドはトンガに魅せられて現地に住み着いた日本人でしたので、日本人がモズクを食べることをよく知っていました。
現地人はモズクを食べないのかと聞くと、昔は食べていたけれど、今は食べる人が減ってしまってまともに採っていないというのです。

モズクをそのまま輸入して販売しようとすると、単価も低く産業としてはあまり多くは望めません。
食品としては99%近い圧倒的なシェアを誇るオキナワモズクと競争をしなければならないというのも大きな壁でした。

そこで試しに、フコイダンを抽出してみてはどうかと実験をしたところ、以前から研究をしていた精度の高いフコイダンに非常に適していることが分かりました。
このことから、単に食用とするだけでなく、フコイダンへ加工することを視野に入れれば、対日輸出産物として有望ではないかというレポート作成し、農水省並びに外務省に提出したのです。

レポートから産業化

まさかこのレポートが、これからを大きく変えることになるとは誰も思っていませんでした。
南太平洋諸国の対日輸出産物調査レポートを提出したことで依頼は完了したはずでした。
もちろん、研究者としての任務は全うしていましたので間違いはありません。
しかし、レポートの内容を現実のものとするために、どうやればいいかと言う問い合わせが何度も来ることとなりました。
サミットで発表するわけですから、日本国としてはレポートだけで終わりというわけにはいかなかったのです。
最初は問い合わせだけだったのが、いつの間にかレポート内容を実現してくれと、連日のようにお願いされることとなりました。
最後まで固辞していましたが、とうとうトンガ産のモズクを産業化しなければならなくなったのです。

2001年 自らの研究所を立ち上げ、トンガ産のモズクを使いフコイダンの産業化に向けて研究を始める

一口に産業化と言っても、様々なステップが必要となります。
何よりも、現地で採れたトンガ産モズクから高品質なフコイダンを抽出する必要があります。
遠く離れたトンガのモズクを原料とするのですから、指名してお買い上げいただける位に研ぎ澄まさなければ産業化も何もあったものではないからです。

幸いにして、トンガ産のモズクは海域の汚染度が低かったこともあり、余分な付着物が少ないという大きな特徴がありました。
精製にあたっての作業工程が最適化され、フコイダンの研究を大きく進めるきっかけを与えてくれることとなったのです。

フコイダンの高精製時に抽出した、フコキサンチンと新規の成分CCKs

研究を続ける中、いくつかの働きにおいては、特にアポトーシス誘導能についてはどうにも実証できず、純度を高めるほどに働きが弱まるという結果となりました。

そこで、取り除いた成分をあらためて検証したところ、いくつかの成分がアポトーシス誘導能の中心となっていることを突き止めたのです。
そのうちのひとつが、フコキサンチンと呼ばれる色素成分でした。
またフコキサンチン以外にもいくつかの成分が働きを担っており、そのうちのひとつが全く新しい物質でした。

モズクから抽出したので、「モズクから抽出した何か」という意味合いを込め、モズクの学名を略したCCKにsを付けてCCKsと呼ぶことにしたのです。

化粧品用途のフコイダンの検討を始める。

次に、フコイダンがモズクの表面の傷や損傷の修復に関与しているのではないかと仮説を立てました。
皮膚科学への応用ができないか検討を始めたところ、間接的ではあるもののフコイダンにはエンドセリンの産生を阻害することが確認できました。
また、エンドセリンが皮膚のアンチエイジングに関して重要であることもわかってきました。

2003年 栄養・食糧学会にてフコイダンと尿酸値改善について学会発表を行う

フコキサンチンや新しい物質CCKsなどの研究を行いながらも、フコイダンについての研究もしっかり続けていました。
その発表のひとつが、フコイダンの尿酸値改善についての研究発表です。
動物実験レベルではありますが、フコイダンを混ぜた食餌を与えることで、ネズミの尿酸値が改善することを確認しました。

フコイダンのコスメへの応用として第1回国際臨床抗老化医学会議にて発表

フコイダンと皮膚の研究を続ける中、高分子量でなければ機能性を発揮しないことが明らかになったことから、化粧品用途として使用可能な品質の高分子量フコイダンの抽出方法を確立させました。
これらの研究結果を元にフコイダンのコスメへの応用として第1回国際臨床抗老化医学会議にて発表しました。

2004年 栄養・食糧学会にてフコキサンチンやCCKsについて発表を行う

フコイダンの高精製化を手がけてから3年目となる2004年は、私たちの研究生活の中では大きな意味を持つ年となりました。
栄養・食糧学会にて、がん細胞にアポトーシスを誘導しているのはフコイダンではなく、CCKsやフコキサンチンと言ったフコイダン以外の成分であることを発表したのです。
今までは、フコイダンそのものにアポトーシス誘導能があると言う前提で研究が進められていましたが、この発表によってフコイダン研究に一石を投じる事ができたのではないかと自負しております。

地域から発信する科学技術シンポジウム(広島)にてフコイダンについて講演を行う。

また、科学技術振興事業団の主催による、地域から発信する科学技術シンポジウムにおいて、フコイダンについての公演を行いました。

2005年 研究成果であるフコイダンとフコサリシレィト(旧CCKs)を配合したフコイダン製品完成

これまで続けてきたフコイダン研究の一つの形として、フコイダンとフコサリシレィトを配合した、全く新しいフコイダン製品を完成させました。
フコイダンの研究を初めてから15年、ようやくこれまで続けてきた研究成果を誰もが手に取ることが出来るようになったのです。

私たちと先生の出会い

私どもとフコイダンの出会いも、この頃のことです。
きっかけは、弊社社長の身内ががんを患ったことによります。
弊社にお問い合わせを頂く皆様同様、なにか良いものはないかと探して回ったのです。
当時も様々なフコイダン製品がありましたが、高価な製品にも関わらず肝腎なことにはお返事頂けなかったり、本当に納得のゆくものを見つけることは出来ませんでした。

偶然にも弊社社長は大石博士とお話をする機会を得ることとなりました。
今まで疑問に思っていた沢山の質問を差し上げたにも関わらず、嫌な顔ひとつせず、明快なお返事をいただけたことを覚えているそうです。
先生方は、認めたくない品質の粗悪な商品が出回っていると言ったフコイダン業界に対して憂慮おられました。
「どのようなご相談やご質問にも必ずお返事を差し上げること」「誠実なご案内をすること」などを守って頂けるのであれば、ということから先生方と私たちの関係が始まったのです。
弊社が現在行っている基本的な方針は、すべてこの時に遡ることができます。

フコイダンの皮膚のヘルスケアテクノロジーへの応用研究開始

前年のシンポジウムでの発表がひとつのきっかけとなり、産学官連携*にてアレルギーの発症・悪化を防ぐ技術を目的とした共同研究が始まりました。
この共同研究を切っ掛けとして、フコイダンのスキンケアローションを開発することとなります。
*広島バイオクラスター事業

フコイダンによるの大腸疾患改善について農芸化学会にて学会発表

フコイダンの摂取による大腸疾患改善作用について農芸化学会にて学会発表するとともに論文発表を行いました。

2006年 安定化が困難だったフコキサンチンの製品化に成功|フコサリシレィトの研究を更に深める

フコキサンチンは、抽出が困難なだけでなく保管にも気を使う必要がある非常にデリケートな物質です。
当時、一般消費者に向けて販売されているフコキサンチン製品は、一つもありませんでした。
そんな中、世界に先駆けてフコキサンチンを一般の皆さまにご案内出来る事となりました。
同時に、新規成分として発見したフコサリシレィト(旧CCKs)ですが、原料によって性質が異なることがわかりました。
中でもダービリア・アンタークティカを原料としたフコサリシレィトは非常に好ましい性質を持つことがわかり、これ以降食品用途のフコイダンやフコサリシレィトの原料にはダービリア・アンタークティカを使うこととなります。

フコサリシレィトの利用方法についての特許を申請

今まで続けてきた研究により、原料による違いを始めとしてフコサリシレィトに対する研究が深まってきたことから、フコサリシレィトの有用な利用法について特許申請をすることとなりました。

2005年に開始した産学官連携の共同研究についての発表が行われる

2005年から開始した、産学官連携での共同研究の結果をまとめて論文として発表しました。*
ここで得られた研究結果を元に、時期を同じくしてフコイダンHVをスキンケア用途のフコイダンとして原料供給を開始しました。

*フコイダンのアレルギーに対する効果(抗I型アレルギー作用)として広島大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学秀教授によって論文発表。(B.B.R.C., 350,501-507 (2006))

2007年 褐藻類に特有のポリフェノールに注目し、研究を開始する。フコキサンチンの様々な機能に着目し研究を更に深める

様々な植物に含まれるポリフェノールは、健康に役立つ成分として知られています。
褐藻類も特有のポリフェノールを持っているのですが、どうしてもコスト的に見合わないと言う課題がありました。
フコイダンを高精製化するときに分離した成分の中にもこのポリフェノールは含まれています。
新たな抽出方法を確立することで分離成分の有効利用にもなるということで新たな研究としたのです。
また、抽出技術を確立したフコキサンチンの有効的な利用方法を模索するための研究を行っていたのもこの頃です。

フコキサンチン配合アンチエイジングスキンケアローション完成

フコキサンチンの肌に対するアンチエイジング効果など、学会誌等に投稿しました。

2008年 第6回国際臨床抗老化医学会議にて発表

前年からの学会誌等への寄稿からの、一つの集大成として、国際臨床抗老化医学会議にてフコキサンチンがレチノイド様作用を持つこと、さらに表皮性色素沈着除去に有効であることを明らかにしました。

2011年 褐藻類に特有のポリフェノール、フロロタンニン類の抽出技術を確立、特許申請を行う

今まで行ってきた研究がようやく実を結びフロロタンニン類(ポリフェノール)の抽出技術を確立することが出来、特許申請を行うこととなりました。
これまでも製品にはフロロタンニン類を配合しておりましたが、より精度の高いものを配合できるようになりました。

II型糖尿病とフコキサンチンについて研究発表を行う

2007年から継続して行っているフコキサンチン研究の成果のひとつとして、フコキサンチンのRBPとの高い結合親和性が、筋肉内のグルコーストランスポーターの量に影響をおよぼすことを確認しました。
この研究内容について、学会誌等に研究発表を行いました。

2012年 フロロタンニンと糖尿病について学会発表を行う

研究チームの大石博士が小細胞肺癌をわずらう

継続して行ってきたフロロタンニン類の研究ですが、フロロタンニン類に糖尿病の症状を抑える働きを見出し、栄養・食糧学会にて発表を行うこととなりました。
また、最も大きな衝撃だったのは大石博士が小細胞肺がんと診断されたことでした。
非常に予後が悪いとされる病気ということもあり、非常に大変なことでしたが、今まで研究開発した成分を飲用することで自らを鼓舞し厳しい戦いに立ち向かいました。

2013年 フロロタンニンと神経細胞の関係について発表を行う

大石博士の治療は順調に進み腫瘍が見当たらないレベルにまで回復

フロロタンニンの認知機能改善に作用するメカニズムの解明に取り掛かり、論文発表を行う。
前年に引き続き、フロロタンニンの働きについて新たな発表を行いました。
闘病中だった大石博士も回復し、より一層研究に力を入れられることとなりました。

フコイダン・フコキサンチンの現在とこれから

1990年よりフコイダンについての研究に始まり、褐藻類研究に関連する成分について長年研究を重ねてきました。
その中で、フコキサンチン・マグジサリシレートR、フロロタンニン類など、褐藻類に含まれる有用な成分についての新たな発見がありました。
2013年ごろまでは、新しい機能の発見についての研究が大きなテーマでした。
大石博士が復帰された時期に重なりますが、これまでに発見した有用成分の組み合わせや、比率などを見直すために、総合的なデータ収集と、トライ・アンド・エラーを繰り返すことに重点を置くこととなりました。
もちろん、研究者ですから見たことのないもの、新しいものへの好奇心を閉ざしているということではありません。

現在も、フコイダンやフコキサンチンといった褐藻類の成分にとどまらず、様々な食品原料から有用な成分を探りながら研究を続けています。
もしかしたら、新しい成分を配合した新たなフコイダン製品をご案内できる日も、そう遠くないことかもしれません。