ワクチンは危険だからやらないほうが良い?
ワクチンには危険性があるという説は、間違いではありません。
以前も書きましたが、この世の中に全くリスクがない物質というものは存在しません。
少なくとも、証明されることは無いかと思います。
水ですら飲みすぎれば健康を害します。
「飲みすぎれば」ですよね?という声が聞こえてきそうなのですが
さてさて、貴方にとっての飲み過ぎは誰がどうやって判断、証明するのでしょう?
結果論として、死んだら終わりと言うようなレベルで良い?
貴方にとっての適正な量が、もしかしたら他人にとっては害を及ぼす量かもしれません。
こんな話をしだすと、キリがなくなってしまいます。
どんな薬であっても食べ物であってもリスクはあるけれども、リスクの度合いと利益の度合いを比較すると利益の度合いが高いから食べたり飲んだりするわけです。
リスクの度合いと利益の度合いをどうやって比べるかというのは科学的な判断をする以外にありません。
科学的と聞くとなんだか良さそうに聞こえたり、理屈でゴリ押しされるようなイメージに拒否反応を覚える方もいるかも知れません。
しかしやっていることは、太古の昔から変わっていません。
随分と昔は、個人の体験が元になったと考えられます。
食べたら体調が悪くなる(なった)から食べない。
ちょっとなら問題ないけど、このくらい食べたら体調が悪くなる(なった)。
記録することが困難な時代は、これらの体験は口伝で伝えられたことでしょう。
記録ができるようになってからは、徐々に蓄積が進んでいったことと思います。
現代は、これを一気に大人数で試して、その結果を蓄積することが出来るようになったと言うだけの話です。
もう一つ言うならば、その結果をより分かりやすく、正確に判断することが出来るようになりました。
リスクと利益の正当な評価
先程、リスクの度合いと利益の度合いを比較して、利益の度合いが高い時に選択するということを書きました。
そのためには、リスクと利益を正確に把握しなければなりません。
HPVワクチン注射の利益
HPVウイルスのワクチンを注射する際の利益は、幾つかの種類のHPVウイルスに感染することを予防することが出来るというものです。
子宮頸がんが予防されることまでは証明されていないことが厚生労働省のページに記載されています(*1)が、これが証明されるにはもう少し時間がかかります。
HPVウイルスに感染しても、すぐにがん細胞が発生するわけではありません。
がん細胞が発生して見えるほどの大きさに成長するまでに10年以上の年月を要するからです。
HPVウイルスの予防効果はかなりのもので、細胞の異形成(*2)の予防効果は90%以上(*1)あると言われています。
これらの結果から、がんの予防効果は少なくとも30%、多ければ70%と言われています。
子宮頸がんは「毎年」10,000人の女性がかかります。
20歳から85歳まで生きるとして、単純に65倍してみましょう。
20歳以上の女性は、54,531万人いますから、何もしない場合に子宮頸がんにかかる確率は1/838.9です。
HPVワクチン注射のリスク
注射をした際のリスクは、副反応と呼ばれる健康被害です。
以前の記事にも書きましたが、10万人に対しておよそ6.1人(*3)ですから、先程と同様に簡易的に数値を出してみると1/16,393.4です。
19.54倍もの差があります。
HPVワクチンで考えられる副反応には以下の様なものが考えられます。
・HPVワクチン接種とアナフィラキシーとの因果関係はあると推定される。
・HPVワクチン接種とADEM(*4)との因果関係は不十分
・HPVワクチン接種と関節炎との因果関係は不十分
・注射とCRPS(*5)との因果関係は不十分
・注射と三角筋滑液包炎(*6)との因果関係は積極的に支持される。
・注射と失神との因果関係は積極的に支持される。
マスコミで喧伝されたような、激しいけいれんや簡単な計算ができなくなると言う例は、因果関係ははっきりしていません。
これらは、どこか単独の国や組織が研究したわけではありません。
(*3)の資料を見ると、アメリカ、デンマーク、スウェーデンにおいて行われており、その規模はアメリカでおよそ60万回接種分、デンマークとスェーデンで30万回接種分を対象とした研究での結果です。
日本のマスコミが持ち上げて囃し立てた研究は、たった1匹のマウスを使った(もしかしたら2匹)研究です。
対象数に天と地ほども落差のある研究をあたかも同一レベルの様に扱うなど、あまりにも情けなくて涙が出てきます。
リスクと利益をどう判断するか
これまで、リスクと利益を書いてきましたが、これをどう判断するかが大事になってきます。
ここでの大きな問題は、現在は病気ではないという点でしょう。
病気になるかもしれないので、ならないようにしましょうというのが予防です。
最大で70%予防できると考えられていますので、毎年7,000人の人が予防効果を得られる計算です。
何もせずに生活する場合 子宮頸がんにかかる確率 1/838.9
ワクチン副反応 0
ワクチンを打った場合 子宮頸がんにかかる確率 1/2,796.5
ワクチン副反応 1/16,393.4
ワクチンは、定期的に打つ必要がありますが、副反応が出なかった人が後の接種で反応が出るということはマレです。
その日の体調が悪いなど、何らかの理由が見られることがほとんどです。
このことから、副反応の数値は加工していません。
上に書いた表を文章に直せば、16,393回に1回なにかが起こるかもしれないリスクを背負うことで、子宮頸がんにかかるかもしれない生涯確率が1/838.9から1/2,796.5に減少するわけです。
これをどう取るかは個人の判断となりますが、なぜそこまで反対を推し進める大きな話題になるのかが分からないのです。
ワクチンを打たなければ副反応が起こることはありませんが、子宮頸がんにかかる確率は下がりません。
何か危険があるからやらないと言う選択ですが、例えば自動車に乗ることなどはどうでしょう?
年間の自動車事故数は、およそ50万件、死傷者数はおよそ67万人です。
毎年67万人の被害者が居るのですからワクチンの副反応どころではありません。
しかし、地球上から自動車を無くそうという運動は起こっていません。
自動車に乗らない、自動車の周囲には寄らない、などという人も、私は今まで聞いたことがありません。
これから先、数十年後にはHPVワクチンを積極的に接種している国では、子宮頸がんの罹患率が明らかに減少してくると考えられます。
一方で、接種率が数%しか無い日本ではほとんど変化が見られないことでしょう。
ある日突然、マスコミが「日本だけ子宮頸がんが多いのは国のせいだ!」などというキャンペーンを張って煽っているだろう姿がありありと目に浮かぶのは私だけでしょうか?
もちろん、接種しないという選択は誰もにあるのですが、その選択は、未来において子宮頸がんにかかる可能性を高める選択であることを本当に理解した上で行うべきです。
ワクチンの代わりにできることはあるか?
ワクチンを打つ代わりに、他のことでカバーすればいいではないかと考えるかもしれませんが、カバーは困難です。
子宮頸がんの検診を受けることは、ワクチン接種の有無にかかわらず必要です。
そもそも、検診は早期発見を目的として行われる行為です。
予防とは全く意味が異なります。
また、早く見つけることが出来るかどうかは、運です。
早期発見にて治療を行った多くのがん経験者が語っているのが「たまたま見つかった」と言うものです。
もちろん、検診を受けなければ見つかることはありませんので、検診を受けることは前提条件です。
その上で、検診を受けた時期などに関して、「たまたまだった」というのです。
半年前に何もなく、半年後にはがんだったと言うことは十分にあります。
早く見つけようと、短期間に何度も検診を受けるような事を行うと、逆に健康を損ないます。
そもそも、都合の良い方法が存在するのであれば、他の国でも検討されているはずです。
世界135カ国以上もの国がワクチンを導入しているのです。
現在のところは、他の方法は無いというのが現状です。
まとめ
現在のところ、正確だと思われる情報を元に考えるならば、HPVワクチンを接種したほうが良いと言えます。
時期を選定すると言う考え方は十分考慮に値します。
公的接種は、中学生になった年に行われていました。中学生という多感な時期、また変化が著しい時期を外すことで体の負担が楽になる可能性は十分にあるでしょう。
とは言え、HPVウイルスの感染が性交渉によって行われることを考えたときに、高校生や大学生と言った思春期を考慮にいれるべきだと思います。
注記
(*1)子宮頸がん予防ワクチンQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html
(*2)子宮頸がんは、がんの前段階として異形成があることが分かっています。異形成というのは、がんではないものの、細胞の形状や性状が健康な細胞と異なるものを指します。
(*3)厚生労働省の資料
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000035617.pdf
(*4)ウイルス感染後やワクチン接種後に生じるアレルギー性の脳脊髄炎です。
感染後あるいはワクチン接種後、およそ1ヶ月までの間に急に発症します。繰り返すことはありません。
症状は多彩ですが、初期症状として頭痛、悪心、嘔吐の他、意識障害、痙攣、片麻痺、失語、脳神経麻痺、眼振、小脳失調などがみられます。
(*5)慢性的な痛みと浮腫、皮膚温の異常、発汗異常などの症状を伴う難治性の慢性疼痛症候群を言います。
(*6)滑液包炎は、滑液包(皮膚、筋肉、腱、靱帯と骨がこすれる部分で衝撃を吸収する液体を満たした袋)の痛みを伴う炎症です。