しびれって本当に危険なの?しびれの原因とその対処法。
しびれという言葉をインターネットで調べたり、TV番組などで見たりすると、命にかかわるような話がよく聞かれます。
手遅れになれば危険なしびれがある一方で、日常的に起こる大して珍しくないのがしびれです。
厄介なのは、危険なしびれと日常のしびれの見分けがつきにくいことにあります。
どんなしびれが危険なのか、その種類や原因と対処方法を解説します。
命に関わる2つのしびれ
命に関わるしびれというのは、大きく二つに別れます。
一つは、脳に関係しているしびれと、もう一つは心臓に関係しているしびれです。
基本的にどちらのしびれも「突発的」に起こることがあります。
脳に関係するしびれ
脳に関係するしびれの原因は、「脳に必要な血液が送られていない」ことで起こります。
もっと言えば、「脳の血管が詰まっている」か「脳の血管が破れている」かのどちらかが原因です。
まさに命に危険が迫っている状況です。
動脈硬化などで血管が細くなっていると、血液が流れにくくなります。
脳の血流不足によるしびれは、様々なところに影響を及ぼします。思わぬしびれに加えて
・めまい
・ふらつき
・顔のしびれ
・ろれつが回らない
これらがみられた場合には、即病院に行って下さい。
間違っても自分で車を運転したりは絶対にしないで下さい。
近くにいる身近な人に頼んで車を出してもらうか、タクシーに乗るか、救急車を呼ぶかの何れか最も早い方法で行きましょう。
病院に着いてしまえば、たとえ倒れてもすぐに対処してもらえますので助かる確率が跳ね上がります。
脳卒中や脳梗塞が起こる時は、一瞬です。
自分で救急車を呼んだり出来る状態ではありません。
様子を見て大事になりそうだったら病院に行くという選択肢は全く通用しません。
心臓に関係するしびれ
心臓に関係するしびれの原因も、「心臓に必要な血液が送られていない」ことで起こります。
もっと言えば、「心臓を動かす、心臓に栄養を送る血管が詰まっている」ことが原因です。
正確には、心筋梗塞や狭心症と呼ばれる病気です。
虚血性心疾患と言う呼び方をすることもあります。
心臓の筋肉に流れる血液が足りなくなっているという意味です。
・心臓への血液不足は、分かりやすくは心臓に痛みを伴います。
・心臓の鼓動(脈拍)も乱れます。
・左手がしびれたり痛んだりするときもあります。
上記のようなしびれではなかった場合
・同じ姿勢を取り続けた。
・服で締め付けている。
・寝相が悪かった。
と言うような思い当たる事が無いのにしびれや痛みが出た時は念のために病院に行く方が安心かと思います。
脳と心臓に関連するしびれや痛みには、病院で対処する以外の方法がありません。
様子を見て、また起こったら病院に行こうと思った時には遅すぎたと言う事例は珍しい話でも何でもありません。
統計的には、60歳以降の方に起こりやすい病気ですので、60歳以降の方はご注意下さい。
すぐに命には関わらないけれども重要な2つのしびれ
先程は、生きるか死ぬかの緊急性があるしびれの話でしたが、今度は今すぐに危険はないけれど、健康に重大な影響があるしびれの話をします。
神経を圧迫することで起こるしびれ
この中には、からだを締め付けたり、同じ姿勢を続けたりと言う、日常的なしびれも含まれますが、ヘルニアをはじめ骨や軟骨が通常より飛び出していたり、骨が歪んでいたりと言う事も考えられます。
この場合には、多くは脊椎が関係しています。
首から腰までの背骨のどこかで、神経が圧迫されていることでしびれが起きます。
・首から腰までの背骨のどこかに痛みがある。大きな違和感がある。
・両手または両足にしびれがある。
・両手または両足に力が入らない。
これらは緊急性はありませんが、放置して良くなることはありません。
原因を取り除くには、手術やゆがみの矯正が必要となります。
神経が壊れて起こるしびれ
どんなしびれにも言えることですが、しびれには神経が関わっています。
血液は足りているのにしびれる場合には、神経が壊れているという事が考えられます。
とはいえ、専門家以外には神経が壊れているしびれを判断することはできません。
誰もに分かりやすい基準は、壊れたら最後治らないという、身も蓋もない結果論だけです。
例外的に予測が可能なのが、糖尿病の合併症や抗がん剤の副作用で引き起こされるしびれでしょうか。
これらは、からだの抹消にある神経細胞が、障害を起こすことで発生します。
治療中であれば、もしかしたら?という予測をすることが可能です。
問題は、先程も書いたように一定以上壊れてしまった神経細胞を、正常に戻す方法が判っていないということです。
この危険を回避するためには、神経細胞が壊れないように過ごす必要があります。
良くあるしびれの仕組み
これまで、重要なしびれについて書いてきましたが、せっかくですので、普通のしびれについても書いてみましょう。
普段良くあるしびれの原因は
・同じ姿勢を続ける
・無理な姿勢を続ける
・からだを締め付ける
・からだを圧迫する
大抵は、これらの何れか、もしくは複数があてはまります。
これらのしびれというのは、単純に神経細胞が活動するのに必要な血流が確保出来ていないこともありますが、面白いのは最後の引き金を引くのが、血液だと言う点です。
京都大学薬学部の研究発表*によると、
1.血流不足で皮ふ近くにあるTRPA1というタンパク質が低酸素状態になり活動を低下させる。
2.活動が低下するだけでなく、刺激には反応しやすくなる。
3.血流不足が解消され、低酸素状態では無くなりTRPA1の周囲に活性酸素が発生する。
4.敏感になったTRPA1が活性酸素に大いに刺激されて、しびれと痛みが発生する。
このメカニズムは、糖尿病や抗がん剤の副作用にも関連しているのではないかということで研究が続けられています。
しびれと日常的にできるケア
これまで様々なしびれについて書いてきましたが、日常的なケアによってしびれが和らぐ場合があります。
そんな方法について書いてみましょう。
抗がん剤の副作用からくるしびれとケア
この場合に出来る最も確実な方法は、原因となっている薬をストップすることです。
・中止
・中断
・減量
・薬の変更
少なくとも、上記4つの選択肢がありますが、どの選択肢が良いのかはお医者様と相談して決める必要があります。
最も確実なのが「中止」なのですが、病気の治療としびれの程度を比較して、患者様にあった方法を選ぶ必要があります。
次に考えられるのが、以前お伝えしたことがある、フローズンキャップやフローズングローブ、フローズンソックスです。
抗がん剤の副作用であるしびれは、末梢に(手先や足先などの末端)現れる傾向があります。
冷やすことで、抹消に薬が行き渡ることを防ぎ、しびれを予防します。
どれも、お医者様と相談して選ぶ必要があるものですが、効果は明らかです。
日常的なケアとしては
・ソフトなマッサージ
・ビタミンB群(特にB6やB12)の補給
が考えられます。
糖尿病におけるしびれ
この場合、何よりも重視すべきは「血糖値のコントロール」です。
これが出来なければ、どんなケアをしても無駄に終わってしまいます。
血液中のブドウ糖は、タンパク質と結合しやすく、結合時には副産物を放出します。
言い換えると、目に見えない小さな爆弾が、色々なところで爆発しているということです。
糖尿病ということは、健康な方よりも多くの爆弾が爆発し続けていますので、からだの修理が間に合わない。そんなイメージです。
また抗がん剤の副作用からくるしびれに記載した日常ケア(マッサージやビタミンB)は、症状を楽にしてくれる可能性があります。
ソフトなマッサージ
マッサージがなぜ効果的なのかはハッキリしていませんが、しびれが軽くなる方がお出でになります。
優しく、という点に気をつけて下さい。
ギュウギュウと押し付けるようなマッサージは、神経を不必要に刺激しますし、先に挙げた京都大学の研究結果を考えても、断続的にTRPA1を通して神経に刺激が繰り返される状態は好ましくないでしょう。
もしも効かなくても、全くと言っていいほど費用負担も身体的負担もありませんので、気楽に試されると良いかと思います。
ビタミンB群(特にB12)の補給
ビタミンB群は、神経の健康に関連しているビタミンです。
特に、B12は神経と大きな関連があります。
これは間違いないのですが、壊れた神経を修復してくれるかどうかは、正直なところわかっていません。
・不足した時に神経障害が起こること
・神経を保護している薄い被膜(神経鞘:しんけいしょう)の材料である
・アミノ酸や脂質の代謝を助ける(体内の細胞を構成する材料を作り出す手助けをする)
これらの働きは、間違いなく確認されています。
少なくとも厚生労働省のページ**には記載が見られます。
ビタミンB12は、摂取制限のない**ビタミンですので、ダメで元々のつもりで多めに摂られてはいかがでしょうか。
ビタミンB12を多く含む食べ物(ug/100g中)
・しじみ 62.4
・イクラ 47.3
・はまぐり 28.4
・牡蠣 28.1
・サンマ 17.7
・めざし 14.6
・焼き海苔 57.6
どれも100gですので、焼き海苔は少々効率が悪いです。
今回はからだのしびれについてご説明させていただきました。
しびれに関連する病気は、他にも多数ありますが、流石に多すぎて一つづつ記載することは出来ません。
このことから、有名なものだけをご報告させていただきました。
2017/12/14更新
参考文献
*「しびれ」による痛みのメカニズムを解明 -糖尿病や血流障害によるしびれ治療薬の開発に期待-(京都大学)
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research/research_results/2015/160317_1.html
**健康食品の安全性・有効性情報よりビタミンB12解説(厚生労働省)
http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail177.html