太るほど食道がんになりにくい
肥満は様々な観点から、健康に良くないと言われています。
実際に、がんの発症率が高い傾向にあるという研究があり、このページでも「肥満とがん(基準となるBMI -ボディ・マス・インデックス-)」と言う記事を掲載しています。
先日、国立がん研究センターから発表された研究に、非常に興味深いものがありましたのでご紹介します。
肥満が食道がんリスクを下げる
見出しにも書いていますが、肥満が食道がんのリスクを下げるというのです。
この研究は、日本各地の保健所を通して10万人の人々を最大22年間追跡調査して行ったものです。
その結果が下の図です。
成人期の肥満度(BMI)変化と食道扁平上皮がん罹患との関連について(国立がん研究センター)より引用
調査の結果、期間中342人の方が食道がんにかかられたそうですが、これら食道がんにかかられた人を、体重の増加によって振り分けたのが右端のグラフです。
Q1と書かれているのが、登録時から調査時までBMIが変わらなかった人。Q2,Q3,Q4と数字が増えるほどに登録時から調査時にかけて太ったことを表します。
そして、上の棒グラフが食道がんに対するリスクですが、見事に太るほど食道がんのリスクが低下しています。
太るほど食道がんリスクは下がる傾向にあるが理由はわからない
ではなぜ太るほど食道がんにかかりにくいのでしょうか。
食道がんのリスクと考えられているのは
1.非常に熱いものを習慣的に食べる
2.喫煙
3.逆流性食道炎(習慣的な嘔吐)
これらが代表的な食道がんのリスクです。
のどが焼けそうな熱いものが良くないと言うのはイメージし易いことでしょう。
喫煙は、食道と一見関係なさそうですが、吸い込んだ煙は食道に届くこともありますし、また煙に含まれている発がん性物質やタールが垂れることもあります。
逆流性食道炎は、逆流した胃酸が食道を傷つけます。
この様に全てに共通しているのは、食道に対して過度な刺激を与えているという点です。
どのリスクを見ても、肥満になれば解消されたり軽減されたりするリスクではありません。
国立がん研究センターの記事でも、ハッキリした理由はわからないと書かれています。
食習慣との関係では、脂質やタンパク質については調査がないものの、炭水化物や魚を多く食べる人ほど食道がんのリスクは低いそうです。
炭水化物で太っている可能性は否定できませんが、脂質やタンパク質を中心に太る人もいるでしょうから理由としては少々心もとないと言えます。
適度に太っている高齢者の方が健康的であることは、よく知られている事実ですがこれは少々関連があるかもしれないそうです。
がんというのは、年をとるほどかかりやすい病気ですから、解らないでもありません。
解らないわけではないのですけれど、様々な要因が絡まっているはずですから原因を特定するのは容易ではありません。
これからもっと研究が進めばハッキリとしてくることでしょうが、現在のところは太るほど食道がんに「は」なりにくいと言えそうです。
参考文献
成人期の肥満度(BMI)変化と食道扁平上皮がん罹患との関連について(国立がん研究センター)
http://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/8043.html