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遺伝子という言葉が持つ4つの意味

こんにちは、大石一二三です。

今回は、遺伝子についての話をしようと思います。
がんに関する情報は誰もが興味のある話題だと思いますが、難しい言葉や勘違いしやすい言葉も沢山出てきます。
勘違いしやすい言葉の一つが「遺伝子」です。

勘違いしないで読むにはまず2つの事に気をつける必要があります。
それは、「生まれる前に起こったことか」「生まれた後に起こったことか」という判断です。
次に、DNAと呼ばれる、各細胞に備わったものの話なのか、DNAの情報を使って作り出された、遺伝子タンパク質の話なのか。

ここを理解していないと、「遺伝子」が何を指しているのか分からず、チンプンカンプンになってしまいます。

生まれる前に起こった先天的な遺伝

生まれる前に起こったことを「先天的」(または遺伝)、生まれた後に起こったことを「後天的」と言います。

「先天的」と言われる遺伝子の問題については、基本的に受け入れるしかありません。
近視眼的には、勝手に良し悪しを決めてしまいがちですが、極めて巨視的に見ると、あらゆる特徴はギフトとも言えます。

人間のからだは、約60兆個の細胞で形作られてることが知られています。
一つの細胞には、2本ずつ23組、合計46本のDNAが備わっていて、DNAには人間の基本情報全てがつめ込まれています。

DNAの出発点は1つの「精子」と1つの「卵子」です。
精子が卵子と出会うことで、父親の「特徴(DNA)」と母親の「特徴(DNA)」を併せ持つ新たな細胞、「受精卵」が誕生します。
受精卵はたった1個の細胞ですが、次々に分裂をしてゆきます。1個が2個に、2個が4個にと言った具合です。細胞が分裂する中で、様々な役割の細胞へと変化していきますが、「DNAは全く同じものを」複製し続けます。

この結果、どの細胞にも同じDNAが収められることになります。

「遺伝」は、受精卵が持つDNAによって決まる

例えば、人種的な特徴は非常にわかりやすい「遺伝」の例です。
黒い髪を持つ人は、老化で白髪が生えることはあっても、急に金色の髪が生えるようなことは先ずありません。
少し前ですが、アメリカの有名な女優アンジェリーナ・ジョリーが遺伝的にがんになりやすいので、乳房の摘出を行ったことがニュースになりました。
「BRCA1遺伝子」に変異があったために乳がんにかかりやすいと言うのが理由です。

この様に、外見の特徴だけでなく、病気になりやすい、なりにくいと言った特徴も遺伝によって伝わります。
これらの特徴は、受精卵に備わったDNAによって決定されるのです。

DNAと遺伝子

遺伝の例として、アンジェリーナ・ジョリーの例を挙げましたが、遺伝子という言葉が出てきました。
この例では、DNAも遺伝子も似たような意味で使われていますが、ここできちんと抑えておく必要があるでしょう。

DNAは辞典、遺伝子はその中の項目のようなもの

先ほど、DNAは46本あり人間の基本情報の全てがつめ込まれていると書きました。
DNAの形は一本の「ひも」の様な形をしています。このひもに様々な情報が書き込まれているのですが、この情報そのものを「遺伝子」と呼んでいます。

生まれた後にも遺伝子は変化する。

同じDNAを複製する仕組みだとは言え、60兆個もある細胞ですから数えきれないほどの間違いが起こります。
この間違いを「後天的」な遺伝子変異と言います。がん細胞は、細胞の遺伝子が変化して生まれたものです。

健康的な細胞は、増えすぎないように遺伝子でコントロールされていますが、この遺伝子が変化してしまうことで、際限なく増えることが出来るようになるのです。

遺伝子そのもの話か、遺伝子によって作られたタンパク質の話なのか?

遺伝子は、DNAに詰め込まれた情報だということを書きましたが、この「遺伝子」、DNAに書かれたままの状態では使うことが出来ません。
分かりやすく言うと、貸し出しをしてくれない図書館のようなものです。

RNAはDNAに書かれた遺伝子をコピーする

必要なのに貸してくれない本、あなたならどうしますか?
きっと、コピーするか書き写すかするでしょう。細胞内でも同じ様に、コピーが行われるのです。細胞内でコピーに活躍するのが「RNA」です。
「RNA」は「DNA」に書かれた情報を複写するのです。これを「転写」と言います。

コピーされた遺伝子を使ってタンパク質が作られる

転写された遺伝子ですが、この遺伝子には「タンパク質の設計図」が書かれています。
この遺伝子を使って様々なタンパク質が作り出されます。
タンパク質と聞くと、食事の際の栄養素や筋肉などを思い浮かべられる方もおられると思いますが、タンパク質には様々な種類があります。
遺伝子によって作られるタンパク質は、細胞が活動するのに不可欠な情報を伝えたり、細胞やその周囲の環境変化に対応するために使われます。
遺伝子を使って細胞内にタンパク質が作られることを「遺伝子発現」と言う言い方をします。

遺伝子そのものに変異が無くても病気はおこる

遺伝子に変異があると、病気になりやすいということを書きましたが、遺伝子そのものに変異がなくても、遺伝子による病気が起こることがあります。
これには、先ほどの「遺伝子発現」が大きく関わっています。
細胞の活動に必要不可欠な「遺伝子発現」ですが、「過剰に発現」したり「発現が不足」する事があるのです。
例えば、がん遺伝子と呼ばれるものに「myc遺伝子」があるのですが、この遺伝子は細胞が増えるのに不可欠なものだということがわかっています。

「myc遺伝子」が不足してしまえば細胞は増えることが出来ませんのでヒトは死んでしまうことになります。
逆に「myc遺伝子」が増えすぎてしまえば、細胞がどんどん増えることになります。がん細胞は、際限なく増えることが知られていますが、「myc遺伝子」が過剰に発現していることで悪い影響が出ているのです。
なぜ特定の遺伝子が過剰に発現するのか、不足するのかについてはまだまだ知られておらず、世界中で研究が続けられています。

遺伝子の変異は珍しいものではない

ここまで、遺伝子について書いてきましたが、私の遺伝子はどうなのだろう?と気になる方もおられるかと思います。
遺伝子が気になる方が増えてきたからでしょう、遺伝子の簡易検査を安価に請け負う企業が増えてきました。
しかし、病気を司る遺伝子に変異体があっても、それだけでは病気と言えないし将来病気になるとも限りません。(もちろん、病気になる方もおられます)

なにせ、遺伝子に欠陥を持たない人はいないのです。
これは、2012年にケンブリッジ大学によって発表された研究結果なのですが、179人のゲノムを解析したところ、ヒトは遺伝子に平均400もの欠陥を持つというのです。
しかも、病に関連する遺伝子的な欠陥を「最低でも1~2個」持っているのだそうです。更に、10人に1人は発病の原因となる遺伝子変異を持っているそうですが、調査した人は皆健康的でピンピンしていたそうです。

どうやら、どこかで辻褄合わせをしているようなのです。
どこでどうやって?と言う問い全部に答えられるようになるには、まだまだ時間がかかるでしょうが、多少のエラーはあって当然の仕組みが準備されていることは間違い無さそうです。