たかが運動、されど運動。(運動と健康)
運動が健康に良いということは、詳しい理由を知っているかはともかくとして、誰もが知っている話です。
一方、健康に良いということは知っていても、たかが運動と考えてしまいがちなものでもあります。
滅多に運動をしない私が他人のことを偉そうに言うのは憚られますが、大抵の人は「簡単に始められる」「自分だけでも始められる」ことを、「つまらないものだ」「大したことのないものだ」と評価する傾向にあります。
しかし、大したことがないどころか、大したもんだと言うのが、世界中の研究者によって明らかにされています。
例えば、がん予防に運動が効果的だと言う研究結果があります。
上は国立がん研究センターによって定期的に作り変えられている表ですが、昨年8月のものです。
運動の部分までを切り取ってみました。
オリジナルのページは下記にあります。
http://epi.ncc.go.jp/files/02_can_prev/evidence/160831.pdf
大腸がんが確実に予防効果があり、乳がんは予防になる可能性があるという評価がなされています。
これらの評価は、世界中で行われている研究論文を出来る限りかき集めて、全てを総合的に評価したものです。
定期的に作り変えられている、と書いたように、どのような研究も絶対ではありませんので、今後この表の記述が変わることもあります。
ともあれ、先程書かれたがんについては、がん予防に効果があるだろうと考えられているわけです。
一方、この様な情報を検索される方や私どものページをご覧になる方は、既に病気を患っている割合が高いといえます。
その様な方々には、病気を患っても運動が役に立つの?
という事が知りたいことでしょう。
予防だけではない運動の効果
2005 年、ハーバード大学と医療機関が共同で JAMA に投稿した論文に「乳がん診断後の身体活動と 生存」(Physical activity and survival after breast cancer diagnosis.)というものがあります。
この研究によると、「身体活動が 9MET-hours/ 週以上の患者では、10年後の死亡率は6% 減少する」 と報告されています。
MET とは運動量の単位なのですが、「9MET-hours/ 週」を運動に置きかえますと
・ウォーキングであれば週に 3 時間以上
・ストレッチやヨガなどをであれば、週に 4 時間以上
になります。1 日ではなく「週」で 3 時間や 4 時間ですから、1 日では 25~34 分程度となります。
論文のタイトルにもあるように「乳がん診断後」ですから、この研究の対象となった方々は全員乳がん患者ですので、予防ではなく治療効果と捉えることができます。
運動がどの様なメカニズムで乳がんの治療や生存率に好ましい影響を与えるのかは、現在のところ判明していませんが、少なくとも効果があることは実験で明らかにされています。
たとえ治療効果がなかったとしても、運動にはストレス改善効果など、様々なメリットもあります。
無理のない範囲で、運動を取り入れられてはいかがでしょうか。