人はどうして太るのか?
太っていると不健康、見栄えもしないということで、痩せたいだとか太りたくないと考える人は多くおられます。
痩せる方法を模索するのも良いのですが、そもそも人はなぜ太るのか?を考えてみるのも悪くないかと思います。
さて、人はどうして太るのでしょうか?
どんな生物も、エネルギーがなければ生きてゆけません。
地球上には様々な生物がいますが、大抵はエネルギーの元となる物質を補給し、その物質を化学反応させることでエネルギーを作り出しています。
エネルギーが切れたら死ぬしかありませんので、決して切らしてはいけません。
日本人の平均寿命は80年以上ですが、生きているあいだの80年間一度たりとも切らしていないということです。
継続的に切らさないと言うのは、簡単なように思えるかもしれませんが、そんなに楽なことではありません。
ですから、大抵の生物は、エネルギー不足に対する対処方法を持っています。
例えば植物のサボテンは、いつ雨が降るかわからないので、水分を随分と溜め込んでいます。
生物の中には、周囲の環境が悪化すると仮死状態になることでエネルギーを使わずに状況が良くなるのを待つという方法を取るものもいます。
冬眠する生物もいますし、ナマケモノやワニの様に出来るだけ動かずに少ないエネルギーで生きる工夫をしている生き物もいます。
また多くの動物の場合は、肝臓や筋肉や脂肪にエネルギーを溜め込むという対処方法を持っています。というか、基本的には余ったエネルギー源は貯め込みます。
そして、人間を含めた多くの動物にとっては「いざという時のために貯めている」=「太るメカニズム」に他なりません。
三大栄養素:糖質、脂質、タンパク質
そもそも太るとはどういうことでしょうか。
脂肪がふえてるからでしょ?という声が聞こえてきそうですが、そのとおりです。
人間の体内には様々な場所に脂肪細胞が分布していて、この脂肪細胞にどんどんと脂肪が蓄積されることで太ります。
脂肪細胞は、大きな袋の中に、小さな脂肪の球をいくつも詰めた形をしています。
当然隙間があります。その隙間には水分が入っていますので、単に脂肪だけではなく水分と脂肪分の合わせ技と言って良いかもしれません。
先程、「貯める=太る」という書き方をしましたが、人間に必要な栄養素と言えば「糖質、脂質、タンパク質」を三大栄養素と呼びます。
甘いものを食べたら太るといいますが、炭水化物や糖分がどんどんと脂肪になっているのでしょうか?
そんなことはありません。極論すれば、糖質だけを食べても太れません。
たとえ太っても、毎日どんぶり飯でおかわりするくらいの勢いが必要になります。(あくまでも糖質だけです)
冷静に考えてみるとわかりますが、砂糖を油に作り変えるのが簡単にできそうでしょうか?
実際には、エネルギーを使って頑張って作り変えていると言うイメージです。
それに、そんな面倒なことをしなくても、脂肪分を食べているわけですから、それを使ったほうが良いに決まっています。
糖質制限ダイエットと言う言葉があるように、脂質やタンパク質だけ食べても太らない様です。
脂肪が増えるから太っているのに、太らないのです。
なんだかおかしな話ですが、脂質やタンパク質だけを食べた場合には、体内でこれらの栄養素をブドウ糖に作り変えて使っています。
先程の炭水化物の例でも挙げましたが、やはり頑張ってエネルギーを使って作り変えています。
そもそも、それぞれに使いみちがあるからこそ、三大栄養素などと呼ばれているのです。
それぞれの栄養素を気軽に別の栄養素に作り変えられるなら、三大栄養素なんて要りません。
どれか一つだけ食べてれば良いのです。
でも、そんなことをすれば健康を損ねてしまいます。
ということは、それぞれの栄養素なりの貯め方があるはずです。
タイプの異なるエネルギー源とその貯め方
糖質
ダイエットの敵と名指しされることの多い糖質ですが、これは短期決戦型のエネルギー源です。
あまり貯めることが出来ませんし、貯めてもさっさと使ってしまいます。
糖質は筋肉や肝臓にグリコーゲンとして溜め込まれるのですが、貯める場所を増やすのであれば、筋肉を大きくすることになります。
筋肉が大きいということは、安静にしている時のエネルギー消費量も増えますので、効率は良くありません。
余った糖質は、あまり効率は良くありませんが、脂肪酸と呼ばれる物質に作り変えられて脂肪として蓄えられます。
とは言え、低効率を物量でカバーするというような食べ方をすれば太ります。
脂質
また、脂質もダイエットの敵ですが、こちらは中長期型のエネルギーです。
言い方は悪いですが、大した努力をしなくても(しないからこそ?)どんどん貯めて、どんどん太れます。
ただし、脂質を貯め込むには手助けが重要になってきます。
どんな栄養素も、生きるために必要です。貯め込んでいるその瞬間にも体中で必要とされています。
ですから、一定量は常に血液中に確保してなければ大変な目に会います。
そこで活躍しているのがインスリンです。
インスリンと言えば、糖尿病の話で聞いたという方もおられるでしょうが、血液中のブドウ糖が増えると沢山分泌されるホルモンです。
インスリンは、余ったブドウ糖や「脂質」を貯め込むシグナルを送るのです。
インスリンは、血糖値が上がると分泌されます。
要は、糖質を食べてインスリンの分泌量が増えた時に、脂質が血液中にあると、どんどん貯め込もうとするわけです。
中長期型の、貯蔵に適した形態なので余ればどんどん溜め込みます。
タンパク質
タンパク質は、エネルギー源として使用することも出来ます。この場合は、中期型のエネルギーと言えるでしょうか。
エネルギーとしての使われ方は脂肪と同じですけれど、どんどん貯めるという事が出来ません。
タンパク質と聞いてイメージするのは、「肉」だと思うのですが、人間の体にタンパク質をどんどん貯め込もうと思ったら、筋肉として貯め込むしかありません。
しかし、筋肉を作ろうと思えば、沢山運動をしなければいけません。
そんなに頑張って筋肉を作って貯めるのは、効率が良くありません。
また、タンパク質は脂質とあわせてからだを作るのに必須の栄養素です。
また、シグナルを伝達するための物質の多くはタンパク質で出来ています。細胞だってタンパク質がたくさん使われています。
もう、無ければ死ぬしか無いと言うレベルの物質です。
人間は、タンパク質をアミノ酸に分解して体中に貯め込んでいますが、そんなに多くは貯められません。
貯めると言っても限度がありますので、使いみちがなければ尿として捨ててしまいます。
活動に合わせて筋肉としても貯め込んでいますが、いよいよ余れば脂肪としても蓄えることは可能です。
よく、痩せるときには筋肉から痩せると言いますが、これは用途による違いが大きいでしょう。
タンパク質は、伝達物質として、日々入れ替わる細胞の材料として、またエネルギー源のひとつとして使われます。
引き合いが多い割に脂肪ほど貯められないので、減るのも早いのです。
まとめ
今まで見てきましたが、糖質も、タンパク質も長期間大量に貯蔵するには向かない栄養素です。
一方、脂質は長期間大量に蓄積することが出来ます。
とはいえ、脂質だけではあまり太れませんので、効率よく太るためには糖質と脂質を過剰に摂る必要があります。
脂肪分タップリで、甘いものをたくさん食べると非常に効率が良いと言えるでしょう。
お菓子を食べ過ぎると太るというのは、どちらも丁度揃っているからです。
クッキーならば、「糖質=小麦粉・砂糖などの甘味」「脂質=揚げる時の油・バターなどの脂」が丁度セットになっています。
糖質で血糖値が上昇し、インスリンが分泌されたところに、タイミングよく脂質もやってきます。
ポテトチップスなんかも、じゃがいものデンプン(糖質)と揚げ物の油という最高の組み合わせの一つですね。
人間もですが動物と言うものは、定期的に食事ができる環境にはありませんでした。
ですから、沢山の栄養素が確保できた時には出来る限り貯め込む必要がありました。
このおかげで生き残ることが出来たのですけれど、今や3食どころか間食だってし放題の世の中になってしまいました。
とは言え、体が持つ生き残りの仕組みは変わっていません。
これが、人間が太ってしまう理由なのです。