腸は第二の脳である(腸についての4つの秘密)
腸内細菌についての記事でも少し触れましたが、腸は第二の脳であると言う考え方があります。
これは、コロンビア大学のマイケル・D・ガーション博士によって提唱された考え方です。
では、何を理由に第二の脳だと言われているのでしょうか?
それには腸にまつわる、4つの事柄が大きく関わっています。
第一の理由・腸には脳神経が存在する
少々おかしな書き方の様に聞こえるかもしれませんが、決して誤解や嘘ではありません。
もちろん、脳が様々なシグナルを処理する最も重要なコンピュータであることに間違いはありません。
間違いはありませんが、「からだに伝わった全ての刺激やシグナルを全てそのまま脳に処理させているとは到底考えられない。」というのが現在の科学者達の殆どに共通した見解だと言えます。
有力な説の一つには、脳は個別の細胞や器官などが独立行う反応を統合し調整しているだけではないかとするものもあります。
この様な説が出る理由のひとつは、脳以外の場所に脳神経と同じ神経細胞、ニューロンが存在するからです。
例えば皮ふにも数多くのニューロンが存在します。
訓練された人は、個人ではとても買えない高価な機械と同等かそれを上回るほどに繊細な感覚を持っています。
例えば、磨きの一流職人は、物質の表面を指先で撫でることで傷を判断します。1ミクロン遥かに下回る凸凹を見分けることも出来る様です。
これは、皮ふにある様々なセンサーが仕事をしているわけですが、これらのセンサーから得られるシグナルを皮ふにあるニューロンが処理していると考えられています。
さて、肝心の腸ですが、数は約1億、種類にしておよそ20ものニューロンが存在します。
千億の単位でニューロンが存在する脳に比べると微々たる数ではありますが、この数は猫の脳細胞と同等の数であり、豚の脳細胞を構成するニューロンと同等の種類です。
第二の理由・脳細胞からの信号が無くても消化吸収が可能
腸は、食べ物がやってくると自動的に消化吸収を開始する事ができます。
もちろん条件反射のような、自動的な仕組みという一面もあります。
それだけでなく、様々な食物が入ってくるにも関わらず食べ物にあわせて消化吸収を行うことが出来る点は、単なる自動的な仕組みと言うよりも、自ら判断して消化吸収をしていると言えるでしょう。
また、からだに害のある食べ物が入って来たときには、下痢をして速やかに排泄したり、嘔吐を促したりすることが出来ます。
これらは、脳ではなく腸が判断をしています。
第三の理由・独立した神経系統を持っている
皆さんは、人体模型や人体の透視図を見たことがあるでしょうか?
学生の頃、教科書に載っていたかもしれません。
ちょっと簡素な図ですけれど、Wikipediaに載っていた図を添付しておきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E7%B3%BB
もっといい絵があれば良いのですけれど、著作権に問題のない神経の絵を見つけることが出来ませんでした。
さて、話はそれましたが、この様に脳から背骨を通して延びている神経が、最も重要な神経経路(中枢神経)です。
この脳から延びている部分から次から次へと枝分かれして体中へと神経はつながっています。
もちろん、この神経は腸にも繋がっています。
腸内に張り巡らされた神経は、中枢神経を無視して活動しているわけではなく、綿密な連携を取っています。
しかしこれとは別に、独立した神経系統を持っているのが腸です。
皆さん、反射という言葉を聞いたことがあると思います。
医学的には何かの刺激に対して、刺激が脳に届く前に中枢神経で折り返して必要な行動を起こさせる仕組みのことです。
(厳密には反射と反応の2つにわけられ、それぞれには違いがありますが、イメージのしやすさを重視しています)
これは非常に上手く出来た仕組みだなと思います。
からだは常にどこかが活動していますので、何でもかんでも脳に処理をさせてしまえば、脳は大変です。
また、生きるか死ぬかの瀬戸際ともなれば、コンマ一秒が生死を分けます。
悠長に脳まで信号を送っている場合ではありません。
この反射経路を「反射弓」と呼ぶのですが、腸は腸だけの反射経路(反射弓)を持っているのです。
この独立した神経経路が、脳からの信号がなくても消化吸収を行える大きな理由のひとつです。
第四の理由・感情をコントロールすることが出来る
これは、腸内細菌について説明した記事にも書きましたが、腸内細菌は動物の感情や行動をコントロールすることが出来ます。
例えば、腸内細菌はブドウ糖や脂肪から、「ドーパミン」を作り出すことが出来ます。
ドーパミンは、快感の元となる物質と呼ばれています。
必要に応じて脳から分泌されるのですが、体内のドーパミンのおよそ半分は腸内細菌が作り出しています。
ドーパミンは、快感の元となる物質ですから、感情をポジティブな、楽しい方向に導くことができます。
そんな物質の半分を作り出す腸が、感情のコントロールに関係ないはずがありません。
・猫と同じ程の神経細胞を持ち
・脳細胞からの信号がなくとも独立して動くことが出来
・独自の神経回路を持ち
・感情のコントロールに大きく関わっている。
第二の脳と呼ばれるだけはあるのではないでしょうか。
2018/3/5 更新