日焼け止めでビタミンD不足?
女性であれば、ほとんどの方は日焼けを気にした生活をしておられるかと思います。
日焼け防止に、日焼け止めを塗ったり、日傘をさしたりと対策方法も様々です。
ところが、日焼け止めの使いすぎはビタミンDの不足を招くのだそうです。
2017年7月12日の読売新聞の記事によると、
(大阪樟蔭女子大を中心とした)研究チームは2016年5月から1年間、同大の学生など20代の女性延べ101人について、日焼け止めの使用頻度や食習慣などを調査した。その結果、日焼け止めを週3回以上使うグループの血中ビタミンD濃度の平均は、通年で基準を下回る「欠乏状態」だったという。(読売新聞記事より抜粋)
ビタミンというのは、体内で作られない、生きるために必須の微量栄養素と定義されていますが、ビタミンDは例外的に皮膚で作ることが出来ます。
とはいえ、皮膚で作られる量だけでは足りないので、食事からも摂取しなければなりません。
ビタミンDが皮膚で作り出される仕組みは、紫外線の力を使ってコレステロールを作り変えるというものです。
このため、日焼け止めで紫外線をカットすると、ビタミンDを作ることができなくなります。
今時の日焼け止めは、一度塗ればその日一日大丈夫といったキャッチコピーが並んでいます。
広告に偽りなしと言う意味では非常に良い話ですが、ビタミンDを作ることを考えると問題があるようです。
ビタミンDの不足は、2013年に国立環境研究所が発表した資料によっても確認できます。
実際、京都市内で2006年から2007年にかけての1年間に出生した新生児1120人を対象とした調査*4では、全体の22.0%にビタミンD欠乏症を示唆する頭蓋ろうが認められました。しかも発症には明らかな季節変動性が認められ、胎児の骨量が増加する妊娠後期が太陽紫外光の弱い冬季であった4~5月出生児に、特に頭蓋ろうの頻度が高いという結果が示されています。
体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定(2013年8月30日,国立環境研究所発表)より抜粋
また、必要とされる日光浴の目安は以下のような表にまとめられています。
体内で必要とするビタミンD生成に要する日照時間の推定(2013年8月30日,国立環境研究所発表)より抜粋
日照時間や、紫外線強度は地域差があること、また皮膚のメラニン量には人種差があることには注意が必要ですが、日光にあたる生活が必要だとされることは世界的に共通した見解です。
幸いにして、ビタミンDは食事から取り入れることが出来ますので、美容とビタミンDの共存は可能です。
一番良いのは、魚を食べることです。
サバ、サンマ、カツオ、シャケ、マグロなどなど、一般に流通している魚には多く含まれる傾向にあります。
およそ100gを目安に食べると良いかと思います。
特に多く含むと言われるあんこうの肝などは、10gも食べれば十分です。
肉には、大して含まれていませんのでビタミンDを考えると役に立ちません。
植物では、きのこ類に多く含まれていますが、魚に比べると量が少ない傾向にあります。
魚が100gで十分なのに対して、きのこ類の場合は200gからそれ以上の量を必要とします。
まあ、きのこだけ食べるとか、魚だけ食べると言ったことをする必要はありませんが、日焼け止めをよく塗る方は特に、魚やきのこをよく食べる生活をする必要があるでしょう。
注記
*4?Yorifuji, J., et al., Craniotabes in normal newborns: The earliest sign of subclinical vitamin D deficiency,?J. Clin. Endocrinol. Metab.,?93, 1784-1788, 2008.
*5?http://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/02.pdf
*6?http://web.kyoto-inet.or.jp/people/vsojkn/kaisetu/kaisetu-1.html
*7?http://www.jpof.or.jp/prevention-sunbathing.html
*8?http://www.miyayaku.or.jp/modules/pico2/index.php?content_id=3
*9?http://www.who.int/uv/faq/uvhealtfac/en/index1.html
*10?Holick, M. F., Vitamin D deficiency,?N. Engl. J. Med,?357, 266-281, 2007.
(*横の数字は原文まま)