肝腎要の腎臓のはなし
さて先日は、肝心要ということで心臓の話題をしましたが、今回は肝「腎」要ということで、腎臓のお話です。
腎臓とは
腎臓は、左右2つがワンセットとなっている臓器です。
さて、この腎臓ですが最も大きな働きは「尿」をつくることです。
体内のろ過器官・体内の成分量の調節器官
腎臓は、毎分800ml?1.2Lの血液が流れ込む器官であることは以前お話をしたことがあります。
ここで何をしているかというと、不要な成分と必要な成分を選別しているのです。
腎臓には、ボーマン嚢と呼ばれる小さな袋状の血管の球のようなものがあります。
この血管は、他の血管と異なり、小さな穴が空いています。
ここに血液が流れ込むことで、穴よりも小さなものが押し出されてゆくというわけです。
ボーマン嚢のろ過装置は主には大きさで判別しています。
必要なものも、必要でないものも一緒くたにして流してしまいます。
例えば、小さなものの代表格としてはブドウ糖が挙げられます。
分子量約180という大きさのブドウ糖は、ボーマン嚢などザルのレベルです。
しかし心配は要りません。
ボーマン嚢を通って捨てられたはずの液体は、「尿細管」と呼ばれる部分を通る際に、徐々に必要なものを吸収してゆくのです。
尿として排泄されるまでに、ブドウ糖は全部吸収されてしまいます。
糖尿病と言う言葉がありますが、これは腎臓を通り抜けたブドウ糖が吸収されずに尿に混じってしまうことが語源です。
あまりにも血糖値が高いと、腎臓で吸収しきれなくなってしまうのです。
例としてブドウ糖を挙げましたが、様々な必要成分が吸収され、本当に不要なものだけが膀胱に運ばれて「尿」となるのです。
水分調節器官
水を飲みすぎると尿が近くなったり増えたりしますが、この働きは腎臓によるものです。
これは案外というか、非常に大事な働きです。
水分量を調節することで、血液の濃度を始め、体の中の水分が適切な濃度になるように調整してくれます。
当然体内の成分量とも関わっています。
ちなみに、「尿を我慢して水をたくさん飲む」と言う我慢大会がありますが、自殺行為にほかなりません。
決してやっちゃいけないことです。
大抵は、我慢できずに飲めなくなったり、尿をしたりするわけですけれど、ひとつ間違って我慢できてしまえばお終いです。
実際に亡くなった方がおられます。
ビタミンDの活性化
体内に吸収されたビタミンDは、最終的に腎臓で活性化されて体内で活躍します。
腎臓の働きが衰えてしまうと、骨も脆くなってしまいます。
血圧調整
腎臓は、血圧の調整能力も持っています。
水分量を調節したり、成分量を調節したりするだけでも血圧のコントロールには大きな役割を果たしていますが、腎臓は血圧をコントロールするためのホルモン「レニン」を分泌します。
腎臓の働きが衰えてしまうと、血圧の調整もままならなくなってしまいます。
一つがなくなっても大丈夫・成長可能な腎臓
左右2つがセットになっている臓器は割りとあります。
手足は勿論、耳や目、鼻、脳も左右に分けることが出来ますし、肺も二つあります。
これらの臓器に言えるのは、どちらか一方が機能を失っても、生存が可能だということでしょうか。
腎臓も片方が無くなっても日常生活は可能です。
どちらか一個だけになってしまうと、当然の様に能力は落ちてしまいます。
こんな時、残った腎臓は徐々に大きくなることが知られています。
およそ1.5倍程度にはなるそうです。
1.5倍=処理能力 とはいえないと思いますが、少なくとも何らかのカバーになることは間違いありません。
腎臓の病気
腎臓の病気といえば、腎臓病や透析が有名でしょうか。
腎臓の濾過能力が落ちてしまい、捨てるべきものが捨てきれずに体中を巡ってしまうのが腎臓病です。
先程の絵で見たように、腎臓の血管には穴が空いているのですが、詰まることがあります。
詰まってしまうと、捨てるべきものが捨てられずにからだを巡ります。
逆に、穴が広がってしまうと、捨てなくていいものが捨てられることになります。
場合によっては、高圧で押し出してしまうこともあります。
尿細管で再吸収すればいいのかもしれませんけれど、尿細管とて何でも再吸収できるわけではありません。
結果的に、捨てなくてもいいものが捨てられるということになります。
このような状態を、大きくは腎臓病といいます。
透析とは
先程の様に、腎臓が捨てなくても良いものを捨ててしまったり、捨てるべきものを捨てなかったりと言う状態になると、長くは生きることが出来ません。
これを治療するのが透析です。
透析は、腎臓を治すことは出来ませんが、そのかわりに、人口の腎臓を使って血液をろ過します。
必要なものは戻して、要らないものを捨てることで、健康状態を維持するのです。
以前は、病院に入院する以外の方法はありませんでしたが、現在は自宅でも使える透析機器が開発されました。
必ず病院に行かなければならないことから、仕事などにも大きな制約を受けていた透析患者様ですが、現在ではある程度健康な人と同じような生活をされる方も増えて来ています。
血尿とは
血尿と聞くと、真っ赤な尿が出てくるものだと思っておられる方がいます。
もちろん、真っ赤な尿も出てきますが、そうとばかりは言えません。
特に、腎臓のトラブルから血尿が出るような場合には、赤ではなく「赤茶色」をした尿になります。
分かりやすく言うと、コーラとかコーヒーみたいな色になります。
腎臓のトラブルで出血している場合、尿として排泄されるまでには時間があります。また一度必ず膀胱でストップします。
この間に血液が固まってしまうので、色が赤ではなく茶色になるのです。
赤い血尿が出る時は、膀胱よりも下の部分にトラブルがある可能性が非常に高いです。
膀胱の中まではキレイな尿なのに、そこから体の外に出るまでに血液が混じってしまうというわけです。
膀胱よりも上にトラブルがある可能性もありますが、腎臓のトラブルで赤い尿が出るということは、どんどん血が出ている状態という事になります。
なんにせよ、血尿が出たらお医者さんに診てもらうのが一番です。
今回は、腎臓についてご説明しました。