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食べ物の味がしない・・・。味覚障害を改善する5つの方法。

食べ物の味がしない、そんな症状が出ることがあります。これを味覚障害と呼びます。
ストレス、薬の副作用、栄養の偏りすぎだけではなく、何らかの病気を原因とすることもあります。

このページでは、日常生活で行うことが出来るケアについてお話しすることにします。

とは言え単純に対処法だけを書いても、少し面白くありません。
また、「味覚とはなにか」ということを知っていることは、味覚障害の予防にも役立つでしょう。
ということで、まずは味覚について知るところからスタートしてみましょう。

味を感じるための三つのセンサー

みなさんは、味を感じる器官と聞くと、なにを思い浮かべられるでしょうか?
大抵の方は「舌」だと答えると思います。

間違いではありませんが、正解というのも少々微妙です。

中心となるセンサー 味蕾

確かに味は、舌の上にある「味蕾(みらい)」と言う部分で感じています。
「味蕾」というのは、舌のザラザラしている部分に数え切れないほど並んでいる、非常に小さな味覚センサーです。
最初の一つが、この味蕾です。

補助センサーその1 嗅細胞

次は、鼻の奥にある「嗅細胞(きゅうさいぼう)」と呼ばれる小さな臭いセンサーです。
メロンでもイチゴでも何でもいいのですけれど、例えばイチゴの臭いを嗅いだ時にイチゴの味がするような気がすることがあります。
臭いを切っ掛けとして、脳細胞など様々な部分が反応をしているからです。
このようにニオイと味覚には非常に密接な関係があります。

また、特定の臭いの刺激は、特別な行動や感情を引き起こすことが出来ます。
例えば生まれてから一度も猫を見たことのないネズミでも、猫の匂いを嗅げば「危険」に対応した行動を取ります。
人間や動物にとって、死臭(具体的には動物が腐敗する際に出す臭い)は「危険」信号です。
個人の性格によりますが、逃げたくなったり、攻撃したくなったりします。
これらニオイと感情の関係が最初に明らかとなったのは2007年のことですから、ここ10年のことです。
(ちなみに、これを発表したのは東京大学の小早川博士です。)

少々話が逸れたように思われるかもしれませんが、感情と味覚にも関連があると考えられており、全く的はずれな話というわけではありません。

補助センサーその2 視覚

最後は、「」です。
料理は目で楽しむなどと言う言葉もあったりしますが、視覚も味には大きな影響を及ぼします。
目隠しをして、かき氷を食べると「何の味かわからない」様になってしまうと言う話があります。

かき氷は冷たいことから、嗅細胞の反応が鈍くなってしまい「臭い」を感じにくくなります。
いちごシロップの赤い色を見ずに、イチゴ味のかき氷を食べてしまえば、取り敢えず甘い何かに変わってしまうのです。

味覚に関する面白い論文も紹介しておきます。割と短くわかりやすいと思いますので、参考にしてみてください。
味覚判断に及ぼす視覚と嗅覚の遮断効果 酒井 浩二 (京都光華女子大学 人間関係学部)

さて、このように、味覚、嗅覚、視覚がすべて揃って初めて味を感じることが出来るということ
もうひとつは、人間の味覚なんて「かなり適当でいい加減」なことが分かってもらえたかと思います。

味覚障害とは

味覚障害とは、食べ物の味がしない、そんな症状ですが、大抵の場合は、「味蕾が減っている」「鼻が悪い」という範囲に収まります。
先程の嗅覚の話を思い出していただければ、なるほどと思ってもらえるかと思います。

この味覚障害ですが、時間が経てば治ったり、軽くなったりする傾向にあります。
これは、味蕾の入れ替わり周期がかなりハイペースであることを理由とします。

味蕾の寿命がおよそ10日と言われています。すなわち、10日経てば入れ替わることが可能なのです。
お肌のターンオーバーが40日とか45日なんて言われているのですけれど、その3倍以上です。
この様に、ハイペースで入れ替わりを続ける器官であることから、回復の可能性が高いのですが、さすがに必要な栄養素が補給されないままでは、寿命で死滅する味蕾の数の方が多くなりますので、ちっとも改善しません。
それどころか、悪化することもあります。

また、口の中の環境が悪ければ、新しい味蕾もなかなか出来ません。

味覚障害とその原因

鼻に問題がある

風邪を引いたと言うような場合だったら、栄養を摂って暖かくして寝てください。それが一番です。
蓄膿症など、鼻に病気を抱えている方は、耳鼻咽喉科で治療をする必要があります。

味蕾が減っている

味蕾が減る理由にはいくつかの原因が考えられます。

過度な刺激を舌に与えている
物凄く辛いものや熱いものを食べたりしすぎると、味蕾は減ってしまいます。
辛いものや熱いものというのは、味ではなく、痛みを感じることで起こります。
辛いものや熱いものを、顔でもなんでも、デリケートなところにあてると、痛みを感じます。
これと同じことです。
舌を普段からイジメていたら、そりゃあ、減ってしまいます。

口内が乾燥している
乾燥させすぎるのもよくありません。
細胞というのは、水分あってのものです。乾かせばやはり壊れてしまいます。

また、味蕾の数が揃っていても、口の中が乾燥していると、味の元となる成分が上手に味蕾に伝わりません。

栄養不足
最後は栄養不足です。特に、亜鉛の不足は深刻です。
亜鉛は、味蕾を作る大事な栄養素です。
もちろん、細胞を形作っているタンパク質や脂質を欠かしてしまえば、亜鉛がいくらあっても無意味です。
とは言え、摂食障害やその他の病気で栄養素が大幅に不足しているような状況や、過度の好き嫌いがなければ、タンパク質や脂質が不足することは少ないでしょう。

味覚障害と対処法

舌や鼻に過度な刺激を与えない

味覚障害の自覚があるのであれば、タバコは止めたほうがいいです。
辛いもの、やたらに熱いものも避けてください。

口の中を乾燥させない

わかりやすいのは、定期的に水分を補給することです。
通常であれば、これでも悪くないのですが、唾液が出にくい病気や症状があるということであれば、この方法は全くと言っていいほど長持ちしません。

アメを舐めると言う方法も効果的です。水分補給よりも長持ちします。
人工唾液を使う方法もあります。
調剤薬局や医院などの医療機関に行くと処方してもらえますが、近所のドラッグストアに行けば、似たようなものが置いてあります。

試したことはありませんが、物理的な特性から行けば、例えばウィダーinゼリーの様な、ゼリー状のドリンクを少しずつ口に含むという方法も行けそうな気がします。
水だと直ぐに乾燥してしまいますが、水分を多く含んだゼリーならば、少々長持ちするはずです。

栄養を補給する

味蕾を含め、人間のからだの細胞は、常に入れ替わりを続けています。
このために何より大事なのは、細胞を構成しているタンパク質や脂質の元となる食事(栄養素)を補給する必要があります。

分かりやすく言うならば、「肉を食べよう!」ということです。少々の脂身ならば残さず食べてください。
肉や脂質は消化吸収されて、体内で細胞に作り変えられます。

亜鉛を補給する

亜鉛というのは、必須ミネラルの一つです。
亜鉛は、味蕾を作り出す大きなきっかけとなるミネラルです。どんなに材料があっても「味蕾を作ろうとしなければ増えません」

通常は、食事から摂ることで十分なのですが、ストレスや薬の副作用の様に急激な変化が起こった場合には、少々多く摂る方が良いと考えられます。

亜鉛を含む食材の代表格は、何と言っても牡蠣です。
100g中13.2mgとダントツの含有量です。豚レバーなんかも多く含まれていて、約6.9mgほどと言われます。
一般的な成人での摂取目安が一日10mgなので牡蠣を100g食べれば十分なのですが、牡蠣ばっかり食べるのは少々困難です。

亜鉛を含んだサプリメントを購入するというのも、一つの方法です。
特定の商品をオススメするわけではありませんが、DHCの亜鉛ならばコンビニエンスストアにも置いてあることがあります。
もちろん、ドラッグストアで店員さんに聞くのもありです。

亜鉛を補給する2

中には、病気の治療中に薬の副作用で味覚障害が出ることがあります。
こういう場合には、大抵「胃薬」が同時に処方されています。
そこで、お医者様に「胃薬を変えてください」とお願いするのです。出してもらうのは「プロマック」というゼリア新薬のお薬です。
このプロマックは、ポラプレジンクと言う成分で、体内に吸収されるにあたって「亜鉛(ジンク)」に変わるという仕組みを持っています。(正確には、亜鉛とL-カルシノンという成分が結合したものが、亜鉛とL-カルシノンに分離されます。)

このため、非常に効果的に亜鉛として吸収されるのです。
普通に亜鉛を摂取するよりも吸収しやすいと言えます。また、良くわからない亜鉛サプリとは異なり、医薬品なので亜鉛の血中濃度の推移なども確認できますので安心です。

ストレスを解消する

最初の方で、人間の味覚なんて「かなり適当でいい加減」だと書きました。色が違うだけ、ニオイが違うだけでいとも簡単に騙されてしまうのが味覚です。
精神的に参ってしまえば、繊細な組み合わせを感じられなくなっても何の不思議もありません。

ストレスを解消することで、本来の反応を取り戻そうという考え方です。

ひとくちにストレスと言っても、様々なストレスがあり、対処法は一様ではありませんが

・お風呂にゆっくり入る
・自分が好きなことをゆっくりする
・深呼吸する
・部屋の空気を入れ替える
・ちょっと散歩をする
・旅行をする

などというのは役に立つと考えられます。

かなり長い記事になりましたが、味覚障害が起こっている方の多くは、この記事で楽になると思います。

また、味覚障害に伴う病名などの情報は、
日本口腔外科学会 口腔外科相談室

に書かれていますので参考になります。

記事中に出てきたプロマックの最も詳しい資料(インタビューフォーム)はこちらになります。
pdfファイルです。

この記事にかかれている対処法でもしも改善されたような気がしないと言う場合は、病院の耳鼻咽喉科や口腔外科を受診することをオススメします。

それでは。