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腫瘍マーカーとはどういうもの?

前回は、リキッドバイオプシーについてお話をしました。
血液による生体検査で、がんの診断をすると言う話でした。

今までも、血液検査は行っていましたし、腫瘍マーカーが「高い・低い」といったことで診断が行われてきました。
一体何が違うのでしょうか?

腫瘍マーカーは特別なものではない

腫瘍マーカーを、高ければがんの可能性が高く、低ければがんの可能性が低いものだと考えておられるかもしれませんが、それは正確ではありません。

実際には、「からだの何処かに異常がある」かもしれない。
と言うことです。

最も有名な腫瘍マーカーのひとつである「CEA」を例に取ってみましょう。
CEAとはCarcinoembryonic antigenの略称で、日本語では「がん胎児性抗原」と訳されます。
がんと胎児の細胞から発見されたことからこの名称が付けられました。

しかし、このCEAは様々な状況で高い数値を表します。
例えば、「大腸癌」「胃癌」「肺腺癌」「乳癌」「膵癌」「甲状腺髄様癌」と言った消化器系のがんで高い数値を示す傾向にありますが、これだけ多くの病気である可能性を示されても何の病気か全く分かりません。
また、がん以外では、「肝炎」「肺炎」「結核」「潰瘍性大腸炎」「ヘビースモーカー」などでも高い数値を示すことがありますので、いよいよ何の病気か想像をすることも出来ないことになります。

この様に、病気の特定が困難な状態を「特異性が低い」と表現することがあります。
特異性が低い、すなわち「ある病気に対して特別なものではないので、診断には使いにくい」と言う意味です。

中には、「特異性が高い」腫瘍マーカーもあります。
それが、PSA(prostate specific antigen:前立腺特異抗原)です。前立腺がんの診断に使われるこのマーカーですら、「前立腺癌」「前立腺炎」「前立腺肥大症」の3つの病気の可能性があります。

CEAは11種類以上で、しかも複数の消化管やヘビースモーカーにまで広がっていた事を考えると、前立腺だけに関連し、病名も3種類とかなり絞り込まれています。
それでも「がん」かどうかは特定できないのです。

腫瘍マーカーはどうやって活用されるのか

様々な病気の可能性がある腫瘍マーカーですが、どのようにして活用するのでしょうか?

具体的には、
1.「がん」であることがはっきりしている患者さん、もしくは「がん」の可能性が高い患者さんを対象とします。
2.治療を行う前に、可能性がある腫瘍マーカーを全て検査しておきます。
3.手術や放射線、抗がん剤などのがん治療を行います。
4.治療前に検査をした腫瘍マーカーの再検査を行います。
5.治療後に大幅に低下した腫瘍マーカーを「腫瘍マーカー」として使用します。

様々な可能性があるとは言え、「がん」の影響で数値が高まっているかもしれない訳ですから、「がん」と関連しているかどうかを確認すれば良いというわけです。

治療によって大幅に低下したということは、がんによって数値が高まっていた可能性が高いわけですから、これらの数値を定期的にチェックすることで、がんの状況を推測することが出来るのです。

例えば、手術で腫瘍を取り去った時にCEAが大きく下がったのであれば、CEAががんに関係していた可能性が高まります。
時間が経って、CEAが上昇してきたときには、どこかに腫瘍があるのではないか?と考えることが出来るというわけです。

それでもがん以外の理由で上昇することがあります。

このことから、腫瘍マーカーの変化で一喜一憂するのは止めた方が良いというのが、多くの医師に共通する認識です。
もしかしたら、この記事を読まれている方の中にも同じことを言われた方がおられるかもしれません。

あくまでも「状況証拠」に過ぎませんから、画像診断をはじめとした検査と組み合わせてはじめて有効に診断ができるという事になります。

リキッドバイオプシーの記事で紹介した血液による検査は、がん細胞から作られる「特異的な」マイクロRNAを検出することで、がんの有無を高確率で判断することが出来ます。
期待が高まっている理由の一端がわかって頂けるのではないでしょうか。

参考文献

I. 総論4.腫瘍マーカーは早期診断にどこまで有用か(大倉久直)
日本内科学会雑誌 第94巻 第12号・平成17年12月10日
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika1913/94/12/94_12_2479/_pdf